Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/11/25


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.247

KAVCのバランス●アンサンブル・ゾネ

 恒例となったアンサンブル・ゾネのKAVC公演。バランスの良い空間プロショ
ーションを作り出す様々の経験が、今回は充実しました。常設の仮設舞台を撤去、
ソデ幕は3尺づつ広げ、ロールバック客席の寸前までを舞台として使用します。実
験劇場的なプロポーションではありますが、ほぼ立方体の見渡しやすい空間が現出
します。

 タッパを高く取ること、あるいは見下ろし客席を設営してタッパを高く見せるこ
とは、各景ごとの構図や作品全体の構成を把握しやすくするようです。このゾネの
ように理の勝ったダンス作品では、その工夫が大変有効になりますね。これは逆に、
情の優る作品などではタッパを余り高くしないのが得ということかも知れません。

 床が奥まで見渡せる、その視界の爽快さが観客を冷静にさせるのかも知れません。
もちろん微妙なバランスなのでしょうけれど、今回のゾネの上演では高瀬アキさん
の即興ピアノが入っただけに尚、視覚と聴覚のせめぎあいの中からある種の悦楽が
生じているように思われます。音楽とダンスがそれぞれ自立して創成される精妙さ。

 この瞬間を味わっている、何が起きるのか分からない、その自覚が観客を覚醒さ
せるように思います。ダンスでは身体の限界を如何に超えるかが時折そのテーマに
なってしまったりするのですが、音楽との協働作業では、聴覚体験が軽やかに身体
の呪縛を解き放つためか、観客も一部では自分が踊っているように感じる。

 そんな身体感覚と視覚体験の只中で、時折酔ったように状況を忘却するわけ。不
思議といえばそんな不思議な、ふくらみのある上演作品だと思います。前回に引き
続きメタハラ灯と蛍光灯を使うほか、新規に高圧ナトリウム灯も投入された照明計
画は、10名を超える出演者のボリュウムとも相まって、かなり暑苦しい世界観の
はず。

 そして表現しようとしていることは(振付演出とは別の観点からの発言ですよ、
念のため)パラダイス、といって言い過ぎなら「楽園」について。天国と地獄の間
にあって、苦しいことと嬉しいことが相半ばする場所、冷たい光と暖かい光が出会
う所処、ボーダー・ラインあるいは一平面であって人は暮らせない物理的な位置の
情報。

 何というか「紙一重」感を、作って見たかったんですね。この光の幕を越えたら
どうなるか、この光の塊りを抜けるとどうなるか、もっと強い光がそこにはあるの
か、光などない暗闇が広がっているのか。もちろん舞踊を成立させる身体の表情や
動きは捉まえた上でのことですが、光が光として舞台に存在する状況を実現したか
った。

 なぜか今年、説明的な仕事が多かった気がしていて、もう作品を説明したり世界
を構築したりではない、光で光を表現する仕事をしなきゃという焦燥感があるので
す。光って何だろう、その根源的な自身の興味を今一度掘り下げて、改めて光の表
現についての自信を持って、何者かに立ち向かわなければいけない、という気持ち
です。

(2008/11/25)


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