Arts Calendar/Art's Report site/《Report from TABISAKI》08/10/30


岩村原太の「万国文化中心報告」vol.244

楽しい●即興の夕べ

 岡山、ルネスホールでの、美術家・瀬辺佳子さんを囲む、即興家たちの競演に呼んでいただきました。
コントラバス斉藤徹、ダンス上村なおか、美術造形瀬辺さん。

 会場は元日本銀行の岡山支店だった建物で大正代のレンガ造。内部は美しくレストアされていて白漆
喰2層分吹き抜けのほぼ立方体の空間です。2階窓を巡って銀行建築に特徴的な回廊があり、そこが照
明や音響用の作業ギャラリーになっています。

 午後から会場入りすると、実行委員の方たちが舞台に紙を広げ、椅子を並べて準備中。実際には始ま
ってみないと何が起こるか分からないのですが、それでも、椅子の向きはどう、舞台の正面はどちら、
ダンスの場所、演奏の場所、誰が決めるとでもなく、何となく着実に体裁が整えられていくのは、皆さ
んのご経験が豊富だから。

 心配することも困ることもないまま、打合せらしい打合せも必要とせずに、夕闇が訪れ場内は光にあ
ふれて、開演時刻を迎えました。岡山のメインアーケードからほど近く、会場の前には市電も通る繁華
街。瀬戸内気候地域だからなのか、本当に何もかもが穏やかで、たっぷりして、充実している感じがし
ます。実際に住んでみないと分からないことも多いでしょうが、ちょうど良い加減に田舎で都会な気が
します。

 今回の即興も、会場設備だけを利用して、1階客席後ろの照明卓と2階ギャラリーを行き来しながら、
フェーダーを上げて、機材の向きを変えて、また降りて照明変化を見せて、再び昇ってアタリを取り直
して、慌てることなく上演の進行についていくことが出来てよかったです。即興だと思うと時々緊張し
ますが、今回は良かった。

 会場の響きも幸いしました。天井と4面の壁が硬い素材で、床はふかふかの絨毯。音は床の固いとこ
ろで天井に向いて、それから落ちてくる感じなので、距離感が余り強く出ず、親近感があります。コン
トラバス1台に瀬辺さんの扱う紙や紐の物音、ダンスの足音が客席に沁み透っていくようで、光もまた
柔らかく白い壁に反射して。

 往年の風防室や金庫室、バックヤードなども基本的にはそのまま現況保存されているのが穏やかなレ
トロ感覚を演出する役にも立ち、照明操作上の良いアクセントになります。面白いのは、天井を支える
ために新規デザインされた四隅の設備柱。こうした会場に必須となる空調と建築照明が組み込まれた近
未来的感覚の造形物。

 インテリアデザインの一部として解釈すればカーペットや椅子、窓枠から覗く庭園の植栽、建物その
もののエントランスにあしらわれたインフォメーションブースなどと統一された平成代の趣味の良い仕
事と思います。その存在感が、無責任に緊張感をあおるので、必要以上に弛緩しそうな場内の空気をバ
ランスよく支えてくれました。

 室内楽の演奏会が多いとのことですが、さりげないコンテンポラリーダンスにも、もっと紹介されて
利用されると良いと思いました。ありがとうございました。キャパシティは約250が上限でしょうか、
落ち着いた雰囲気です。

(2008/10/30)


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