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伊藤多喜子の「別冊 邦楽ノート」
vol.19

Arts Report 2009/5/23
「あいのて」LIVE @ PERCUSSION HOUSE PICO

出演/あいのて(野村誠・尾引浩志・片岡祐介)、ゲスト/梶山シュウ

「あいのて」という3人グループ。NHKの子ども番組にレギュラー出演していたらしく(私は見たことないけど)そのときの衣装か、赤・青・黄のTシャツ & ベレー帽で、年齢不詳な外見になっている。

ライブ会場は広島の歓楽街にある、怪しいビルの奥の小さな店。そんなところに、お客のほとんどは若い女性で、中には子どももいる。帰りは大丈夫なんだろうか?

進行上、出演者は服の色で呼ばれるらしい。黄色のあいのてさんはパーカッション、卓上木琴など。青のあいのてさんはヴォーカルと口琴、たぶん中央アジアのほうの弦楽器。赤のあいのてさんは鍵盤ハーモニカとピアノなど。

昨今、そんなに驚くような楽器編成ではないが、音楽の方向性としてはかなり変わっている。格好はともかく、一般的なミュージシャンの匂いがまったくない。

たとえば鍵盤ハーモニカ。じつは昨年秋、私が企画した『邦楽ノート』(主催:広島市東区民文化センター)でも、尺八×ピアニカだけのコンサート(尺八/ジョン・海山・ネプチューン、ピアニカ/松田昌)を、初の試みとして行った。松田昌さんのピアニカは、例えていえば「太陽」。熱い熱いエネルギーを、一生懸命、客席に投げかけてくれる。
しかし野村誠さんの鍵盤ハーモニカは、静かな生き物のようにうごめいて、ただ単に「そこに在る」というかんじ。
熱すぎも、冷たすぎもせず、接近してくることも拒絶されることもない。

演奏を聴きながら、なんとなく3人の演奏者を順番に見ている。ふと、目があう瞬間が一度ならずある。注意ぶかく観察してみると、この演奏者たちは観客一人ひとりの目を見ながら演奏している。

例えば、私がふと、退屈そうな目をしたとしよう。その瞬間、この人たちはもう即座に反応して次のことを始めるにちがいない。過不足のないタイミングで、あざやかに別のスタイルに展開する音楽。「即興」って、本当はこういうことか、と思った。

中盤にゲストの梶山シュウさんのベース & ヴォーカルソロ。シュウさんも地元では異色の存在で、エフェクターを駆使し、鋭く瞬発力のある演奏をする人。広島で「あいのて」の相手ができるのは、たしかに彼くらいだろう。

最後に「あいのて」の3人とシュウさんとで、「何をしようか」と集まってから相談している。ふとシュウさんが、さっきまでの白っぽい帽子を緑色の帽子に替えた。誰かが「全員帽子をかぶった!」と言った。次の瞬間、「全員帽子をかぶった」という即興演奏が始まった。・・・ほんとうに困ったおじさんたちだ。うらやましい。

主催/出演者、PERCUSSION HOUSE PICO



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