Arts Calendar/Art's Report site/《NOTEJAPAN Report》TorigoeTrio'03*Jive

伊藤多喜子の「別冊 邦楽ノート」
vol.7

Live Report 2003/8/8
鳥越啓介トリオ@Jive

出演/鳥越啓介(b)、田中信正(p)、MANABU(ds)

今はNYへ行ってしまったソウルヴォーカリスト、コジマサナエのバックメンバーだったのが縁で知り合った若いベーシスト鳥越くん。
サナエの感性には私も100%の信頼をおいているので、サナエが認めるベーシストである彼が、自分のバンドでどんな演奏を見せるのか非常に楽しみ。それにユニークかつアヴァンギャルドな新進気鋭のピアニスト田中信正さん、大好きな広島のドラマーMANABUさん。

広島は折しも台風が来そうで、風と雨の変な天気。でも台風の変な天気って空をよく見るとおもしろいんだよね。今日のトリオはまさに台風みたいな人たち。
演奏を待ちながら、ふと「河童」を想像する。頭の上のお皿の水が乾くと元気がなくなってしまう河童。ときどき、お皿に水を入れなきゃ生きていけなくなる。音楽の感動をときどき味わわないと生きていけない私。

最初の曲がいきなりマイケル・ジャクソンのナンバー「Mirror Man」。かと思えば4ビートの古典的なジャズ、ウッドベースのためのクラシック曲、タンゴ、クラブ系のダンスナンバー。出てくる曲、出てくる曲がさっきのからは想像もつかない変化球ばかりで、これがやっぱり若者の自由な感性なのかなと思う。

ウッドベース好きの私は今までいろんなベースを聴きくらべてきたけど、鳥越くんのベースはほかの誰とも違うような気がする(ダントツ若いし)。
なんていうか、子どものときからロックを聴き、手足が長くスタイルのいい日本の若者の耳にすっと入っていくような音楽が、大きくて重たいウッドベースから軽やかに出てくるという驚き。

その上、今日は彼のやりたいことを瞬時に理解して音にしてしまうおそるべきピアニストとドラマーがひかえている。3人のやりとりはまるで電流が流れるようなおもしろさ。台風の雲に帯電した電気エネルギーが、三角形にバチバチ音をたてて回っている。

ピアノの田中信正さんの演奏など、もう、自分の体内から自家発電される電気がどうしようもなく身体を伝ってピアノに流れていくみたい。信正さんの身体は単なる「導体」になってしまって、生身の彼はいったいどこにいっちゃったんだろう?

鳥越啓介トリオは台風の空みたいにおもしろくて変わったトリオだけど、無理して変わった態度をとろうとか、プライドを維持しようとかいうイヤな感じのエネルギーはすこしも使わず、力を抜いて普通にしてたらこうなりました、という落ち着いた自信に満ちている。
日本のジャズ(って呼んでいいのよね?)にもようやく落ち着いた日本らしい音楽が登場しつつある。私もうれしくて力が抜けてしまいそうだ。

主催/鳥越啓介トリオ


伊藤多喜子の「別冊 邦楽ノート」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室