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伊藤多喜子の「別冊 邦楽ノート」
vol.6

Live Report 2003/6/2
アコースティックモーション広島公演@サテンドール

出演/Acoustic Motion;中島教秀(b)、武井 努(ts)、清野拓巳(g)、中島徹(p)、東原力哉(ds)

広島の小さなライブバーは机も全部外に出すほどの超満員。バンド名はそんなに知られてなくてもメンバーの1人ずつがそもそも有名で、それぞれのファンも来ているようだ。しかしこれは単なるセッションバンドじゃなくて、ベースの中島さんのオリジナル曲を、あるコンセプトにもとづいて演奏するバンド。

そのコンセプトは「東洋のジャズ」。といっても、東洋の民族楽器や和楽器が入ってるだの、古典曲をアレンジしてるだのというプロトタイプなものではなく、現在の普通の日本人(東洋人)の生活をそのまま普通にジャズバンドで表現している。言ってみれば観光地じゃなくて自宅か近所の音楽。なにも力まなくても、実際、山と料理が好きな関西の普通のおっさん(リーダーの中島さんのこと)が作った音楽は、やっぱり山と料理と関西のにおいがする。

余談だが、私はどうも有名外国人ジャズメンの演奏がピンとこない。これは本当にスゴイから、と連れていかれても、何ひとつ感動せずに首をかしげながら帰ってくることになるので、もうそういうものは聴かないことにしている。外国で認められたとかいう日本人の演奏も同様。周囲のお客さんは大喝采してるなかで(それって本心?スタイル?)と思いながらだんだん不機嫌になってしまうのが関の山だ。邦楽人を納得させるにはそんなもんじゃダメ。

アコースティックモーションのキャッチコピーは“摩訶不思議東洋的ジャズ楽団”、東洋音階を使ったジャズのようなブラスロックのようなサウンド。やさしいメロディーには何のてらいもない。お仕着せでない楽しい雰囲気が出てるのは、この関西人たちの人間関係そのものが楽しいからだろう。メンバー5人は音楽をやる普通の人で、けっして芸人とかタレントではない気がする(きっと本人たちもそう思ってるんだろう)。
そしてこれが現在の関西屈指のバンドであろうことも想像できる。演奏の盛り上げ方、トークの間合い、全部にあたたかくてエネルギッシュな関西の風景が見えてきて、広島のお客さんもあっというまに仲間になってしまう。

そのアコモのサウンドを特徴づけている力哉さんのドラムは、ものすごい迫力と派手さに初めて聴く人はびっくりして、そういう魅力に対するファンが圧倒的多数だと思うけど、私が前から気になっていたのは、なぜか所々で邦楽のリズム、とくに長唄囃子に似てるような気がすること。

長唄の囃子は鼓(つづみ)、大鼓(おおつづみ)、締太鼓(しめだいこ)が絶妙に組み合わさって、なんでこんなことになるんだろうというような複雑なリズムの幾何学模様が出来上がる。その幾何学模様(リズムの種類とか何拍目とか全然わからないのでそういう表現しかできない)の形と、力哉さんのドラムから出てくる模様の形がよく似てるのだ。突然「間」をとってポン!と打つようなところとか、前へ前へとたたみかける「大鼓」とそっくりな部分とか。

もうひとつ大きな特徴は、楽曲全体の強弱というか、「フォルテ」と「ピアノ」が1曲の中に見事にちりばめられているところ。急に静かなフレーズが出てきたり、ある拍子に突然アクセントがついてみたり、ちょっといたずらっ子のような感じがする。よくある商業系の音楽では、のんべんだらりと同じ強さの音がつづいて1分も聴けば飽きてしまうが、アコモの音楽では静かな曲と思えばそうでもない、にぎやかな曲と思えばそうでもない、押しては引くバランスがちょうどよくて、まるで交響楽を聴いてる気分になる。このまま1曲が何十分続いてもぜんぜん苦にならないだろう。

アンコールは『レッカー移動』という題名の1曲しか準備してなかったらしく、拍手が鳴りやまないので「しゃあないからやりますわ」と言いながら中島さんがベースソロを弾いた。ぐっと静かな演奏に会場全体が食い入るように耳を傾け、終わると本当に納得したような拍手が響いた。

主催/サテンドール
協力/ノートジャパン公演事務局


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