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伊藤多喜子の「別冊 邦楽ノート」

コジマサナエ Live Report/2002.8.10岡山ジャズフェスティバル

この夏、岡山で初めてのジャズフェスが開催された。そのメインステージにサナエが出演するというし、広島で行こうかどうしようか迷っていた小曽根真&ゲイリー・バートンも出るらしいし、それなら旅行もかねて岡山に行ってしまおう。広島FUSEのサナエのライブもとてもよかったし、自己打上げ。そう思いたって、さっさと岡山に向かった。

サナエたちの会場入りにあわせて、12:00ごろにメイン会場のシンフォニーホールへ。たぶん2000人くらい入りそうなオーケストラ用の大きなホールで、受付にはスーツを着た係員がいっぱい。なんだ、ボランティアスタッフばかりで大変だとかきいてたけど、ちゃんとしてるじゃん。主催者代表のH氏(岡山出身のサナエをこれまで育ててきたジャズ屋さん)に頼んで会場に入れてもらおう。そう思って電話をかけてみた。
「あ〜、ちょうどよかった、今から小曽根真を迎えにいかんならんのに、誰もいなくて困っとったんじゃ〜。すぐ来てくれ、もうあと5分で駅に着いてしまう〜」
急いでるのか、落ち着いてるのかよくわからない口調でも、とにかく助けを求めているようなので階段を降りていく。

H氏は車の中で誰かと電話しながら手招きするので隣に乗って、岡山駅に着いて新幹線の改札口に行けといわれてダッシュ。でも地元民じゃないから土地勘もなく、表示を見ながらアタフタして改札にたどり着くのに、車をとめてきたH氏とほぼ同時になってしまう。どうにかこうにか小曽根様ご一行をホテルに案内して、セッティング真っ最中の会場に戻るとまたまた大変なことになっていた。

広いステージにはボランティアと思しき若者たちが10名以上も立ってるが、それに的確に指示を出す人が誰もいないので、彼らもどうしていいかわからずボー然としている。音楽関係者にも見えないし、おそらく今日初めて裏方やりますってかんじの動き。出演者たちは次々やってくるし、時間はどんどん過ぎていく。全部をひとりで把握してるらしいH氏は電話鳴りっぱなし、リハをすすめるどころじゃなく、ず〜っと電話している。ミュージシャンたちはキレそうなのを必死にがまんしている。H氏抜きで進めようにも、舞台図面もないらしい。部外者の私も手出し口出しせぬようがまん、がまん。

ミュージシャンのためのリハーサルというより、舞台ボランティアのためのセッティングリハが延々とつづく中、私はいたたまれずロビー退場。ほんとに幕が開くのかなあ。お客さんはどんどん増えてきて行列になっていた。

その後ステージ上がどうなったのか知らないが、私がチケットを買って客席に座り(バルコニー席でちょっと怖いけどいい気分!)、幕が上がってみると、さっきのおそろしい状況はどこへやら、ちゃんとセッティングもしてあって普通に演奏がはじまった。

純粋にお客として全4バンドの感想を述べてみよう。

1番目、地元のおじさんたちのカルテット。ソツのない昔風のわかりやすいジャズで、残念ながら私の感性が刺激されたり、心にしみ込んでくることもありませんでした。年輩の人にはいいだろうなあ。あとできいてみると、岡山ジャズの礎を築いた人たちとのこと。そんな功績のあるおじさんたちだったのか〜。

2番目、サナエのユニット。さっきのと比較すると、まるで水彩の風景画から、突然現代アートにいってしまったかんじ。岡山はサナエの地元だから、きっとサナエファンもたくさん来てるはずなのに、会場がデカすぎるのか、拍手が小さいなあ。それにしてもサナエはこんなデカいホールでもぜんぜん小さく見えない。それはたぶん体重のせいだけではないと思う。

3番目、外タレのヴォーカル&ビッグバンド。つば広の帽子をかぶった黒人がずらっと並んでトランペットにトロンボーンにサックス、胸のぎゅっと上がった赤いドレスの白人ヴォーカル。なんか、昔の外国映画をみているようでした。古典的なジャズファンにはたまらないと思うけど、残念ながら邦楽出身の私には、音楽的にぜんぜんピンと来ない。つまらないのでロビー退場。ごめんね、せっかく遠路はるばる来てくれたのに。

4番目、小曽根真&ゲイリー・バートン。去年、広島のコンサートにいって大好きになり、長蛇の列に並んでサインまでもらった小曽根さん。ところが、今回のはリハからぜんぜんピンとこない。リハじゃ判断できないし、と思って本番を聴いてみても、なんか、去年とちがう・・。広島から一緒にきて隣に座っていた友達のNちゃんは、2曲くらいですっと席を立って早くもロビー退場してしまった。
でも小曽根さんのピアノはいいはずじゃん。よくよく聴きながら原因を考えてみる。
そうか、美しいピアノの音色を消してしまう耳ざわりなビブラホンの余韻。耳にキンキン響いて息苦しくなってくる。私はぜんぜんいいと思わないけど、会場からはすごい拍手! そうか、今日のお客さんはほとんどこれ目当てだったのだ。でも、ビブラホンてきれいな音のする楽器じゃなかったっけ?

そういえば今回のPAはお世辞にもほめられたものではなく、リハの時点でハウリングしまくり、本番でもベース音割れまくり、音に敏感な邦楽人の耳には堪え難いものでした。その後、広島での小曽根&ゲイリーのコンサートを聴いた人から、反響板をつかって完全な生音でやったけど充分聴こえたし、とてもいい音だったときいたので、あの原因の半分はPAにあると思う。その点は非常に残念。

はじめての岡山ジャズフェスティバル、じつはメイン会場だけでなく街中いたるところに特設ステージがあったり、ライブハウスを使ったり、協賛企業のスペースを使ったりと、じつはすごく大規模なものだった。
サナエもシンフォニーホールの後、市内からすこし離れた所にある自動車販売店のスペースで演奏したが、こっちにもお客さんはいっぱい、フードとドリンクも用意されてたし、社員のみなさんが夜遅くまでよく働いていた。同じボランティアでも、こういう姿を見ると感動するなあ。
サナエはというとさっきのホールとまったく変わらぬテンションで楽しそうに歌って、店内に心地よく歌声が響く。こっちの音はすごくいいぞ。お客さんも大拍手! そうか、サナエファンはこっちに集結していたのか。
ちなみにこの会場には、サナエの出演時間前に小曽根さんとゲイリー・バートンがやってきて、サイン会だけやって帰っていきました。私にとってはちょっぴり謎の展開。こんなもんなんですかね?

それにしてもみんなから「ダメダメ君」呼ばわりされていた実行委員長H氏、翌日彼のCDショップにパーカッションのK氏と一緒に行ってみた。「いや〜、やっぱり来年から舞台監督はプロに頼まんといかんな〜」という表情にも声にも、まったく疲れた様子もなく、というか普段どおり、相変わらず急いでるのかゆっくりしてるのかわからないスピードで、きのう使った機材を台車に積んでいた。
そういえば町をぶらぶらしていたら9月に行われる「岡山音楽祭」というイベントのパンフレットがあり、手にとってみると「実行委員長 H」とあった。ある意味、この人はスゴい。

(おわり)


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