こぐれ日録 KOGURE Diary 2002.9



177) 9/9〜9/12

9/9(月)

旧暦では重陽の節句らしいのですが、新暦では菊を見るには早すぎますね。中国では丘に登るらしいのですが、今日は朝の風が清々しくてきっと山の上に上がれば秋をもっとちゃんと感じられることでしょう。1/1、3/3、5/5、7/7と続いているのに、9/9や11/11も何か季節行事が復活するといいかも知れません。

午後はじめて京都府庁へ行きました。旧館というのか戦前の建物には知事らはいないのでちょっとがっがりしました。あそこはどうなっているんでしょう。検討会議のあと山田啓二さんに久しぶりに会ったのですが、全然彼が昔と変わっていないのでとても楽しく30分ほどおしゃべりしました。

知事のなかの若手集団がいま50歳代になっていて、40歳代は田中康夫長野県知事と彼だけなのだそうです。可笑しかったのは、うちの大学で自分が教えられるのは「まちづくり」かなあと言いだしたこと。時間があったら講演しにいくよと言って、横にいた和田君(総務部長)に、京都には28の大学があります、とたしなめられていました。それでも、何だか行きたそうでした。うちも突然来られてうまく受け皿が作れるかどうか・・。

山田知事に会う前の会議は京都府の文化を担う人たちのヒアリングで、映像メディア(大学教授と民間社長)、染織・陶芸・画廊経営と4時間弱お話を聞きました。CS放送と東京キー局の番組づくりでは、1時間当たりのコストが二桁違うとかいろいろ勉強になります。日展傘下の工芸グループが複数ある話とか賞の出し方などを聞きました。

9/10(火)

研究室では19日の大阪市立中央青年センターでのアートマネジメント体験セミナーのレジメや資料を作って送付したり、「地域文化行政論」の第3回目の講義のために京都府の文化行政をまとめてみたりしました。京都府では芸術文化振興、生活文化振興、地域文化振興の3つに分けて考えられているようで、この場合の「地域」は京都府よりも狭域を指すようです。

改正後の地方自治法では「地域における行政」(第1条の2第1項)とか「地域における事務」(第2条第2項)「地域の特性に応じて」(第2条第13項)というふうに、もっとも重要な定義に「地域」という用語を使用しています。この場合は、その自治体の固有の地域性というニュアンスとなるので、「地域文化行政」をどう解釈していくのかうまく整理しないと、混乱させてしまいそうです。

つまり講義名からして、1)「地域における文化行政」、2)「地域文化に関わる行政」、あるいは3)文化に関わる「地域行政」(「地域における事務=自治事務」)とも分解できるからです。結局、2)は少しそれ以外と異なる感じがしますが、1)は国の文化行政に対しての地域というニュアンスがあり、3)は文化とそれ以外の地域行政という横の比較になるだけで、ほぼ同意味だろうと考えたりしました。

HEP HALLへ。HEP FIVE 学習塾、民博シリーズ『ネパールのポピュラー音楽〜ヒマラヤン・マサラ・ミュージック』19:01〜20:35。バーンスリー(竹笛)を中心としたエスニックな音楽ライブも楽しかったし、国立民族学博物館の南真木人さんの話も国際文化理解という面でとても参考になりました。

初めに2曲、パンチャ・ラマとチョウタリ・バンドの演奏。「ヒマラヤの風」、そして「タマン」。タマン族の独特のリズムによる「タマン」はお祭りの音楽でどんどん早くなるところなど韓国の音楽にも似ています。初めははやりの癒し系な感じがしてニューエイジとか喜多郎とかを思いましたが、またそれとも違う味もあります。(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記385」をみてください)

9/11(水)

送っていただいていた『文化政策を学ぶ人のために』(上野征洋編、世界思想社、02.8)を読みました。静岡文化芸術大学政策学部のスタッフが多く携わっていて、ここの学部の教えている様子がよく分かってとても面白かったです。

イベント学(イベントロジー)のイベントとは「催事+祭事+歳時」なのだけれど、結局イベントのキーワードは「集中」なのだという犬塚潤一郎さんの話が一番新鮮でした(いままあ、そういう限界ものを彷徨っているからかも知れませんが)。

梅棹忠夫とかは京都なのでなじみだったのですが、松下圭一という人が多く引用されて時代を画した人なのだと改めて思ったことと、ハーバーマスという人は若いときにいまいち面白くなかった記憶があって全然読んでいないけれどやっぱり数冊ぐらいは買わなくちゃなあと思いました。たぶんブルデューの大冊などと同じ運命になるのでしょうが。

今年度から出来た文化庁の肥大化予算の一つ、芸術拠点形成事業について、fringeの荻野達也さんが調べていて、彼も言うように助成施設に民間がほとんどなくて(横浜のSTスポットはまあ運営は完全に民間ですが)自治体ばかりになってしまっています。誰が選んでいるのかも公表されていないみたいだし、西洋クラシック音楽と演劇ダンスでは形態も違うし役割も異なる(はっきりいえば西洋のクラシックの追随ばかりやっているところにいまさら拠点性などない)はずなのですが一緒くた。

芸術監督みたいな偉くえばっている人がいて予算を多く使って企画をやっていることが条件の一つなのですが、その人たちがいるということとその人がいいことをしているかどうかは別だし、そうでないところの方がずっと素敵だということも多い(たとえば、碧水ホールや創世ホールを見ればすぐさま分かるでしょうに)ことを考えてみると腑に落ちないことが多すぎる助成制度です。

国の義務助成ではなく奨励的な助成でその役目は限時的でかつ象徴的でなくてはならないのですから、わざわざ広域的な拠点であるべき都道府県の所に助成する必要はまるでなくて、都道府県のなかでそういう拠点がないところが恥ずかしいというぐらいでないといけないのではないでしょうか。

荻野さんによると、以下の19カ所が今年度の拠点だそうです。
盛岡劇場 長岡リリックホール 小出郷文化会館 水戸芸術館ACM劇場
彩の国さいたま芸術劇場 世田谷文化生活情報センター(世田谷パブリックシアター) すみだトリフォニーホール 神奈川県立県民ホール 横浜STスポット
富山市芸術文化ホール(オーバードホール) 静岡芸術劇場 愛知芸術文化センター 知立市文化会館(パティオ池鯉鮒)
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 京都府立府民ホール・アルティ 兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター) 伊丹市立演劇ホール(アイホール)
熊本県立劇場 沖縄市民小劇場「あしびなー」

9/12(木)

2度あることは3度ある。今週も間違うことが多かったのですが、今朝関経連に行ったら会議は明日でした。うーん、でも、そのかわり2つ大阪で展覧会を観たし、うろうろしたので疲れましたがよかったかも知れません。以下、省力化のために今日の出来事を個条書きします。

1)graf bld.をいま建設中の国立国際美術館の前に見つけながら心斎橋へ。
グラフといういまデザイン界で大注目のグループのビルが思ったより小さかったので前は見つけられなかったのだと分かる。1階の乱雑なスペースには犬がいる。その奥で家具をこしらえているから町工場みたいな気安い感じが漂っている。が、オープニングはお昼なので残念ながら中には入れず。

2)今井祝雄「とき曼陀羅」展をカメラのナニワ5階のスタジオ・アーカ(なにわ感動メディア研究所)で見る。
今井さんは今年の前期にとても分かりやすいパブリックアートのレクチャーを2回してもらった先生で美術家なのだが、この20年間のデイリーセルフポートレイトの中に入ると「具体」の人だなあとその無性の自由な空気が嬉しくさせてくれる。髪の毛が少しずつ後退していくのとか、眼鏡の変化とかずっと見ていると目眩がしそう。

続けるためには、当たり前だが飽きないことと設定がシンプルなことが決め手だろう。それに病気や旅行やさまざまなアクシデントがあるわけで、ぶれたポラノイドや色が変わったものなどがちょっとそういう異変の痕跡などを感じさせてくれる。

3)老松通りから西天満のマンション11階に出来た新しいスペースへ。
古美術画廊などがある裁判所周辺を歩く。大江ビルヂングの地下のamusでアイヌの口琴ムックリの演奏家、長根あきのCDを買う(「モノラー」)。日本民藝館の販売店などを見つけたり、閉廊したギャラリー白の前を通り過ぎたりする。ホワイトキューブOSAKAをのぞいたあと、原久子さんからご案内があった「GALLERY wks.」を探すがなかなか見つからず。

4)中西信洋展〜ART-REN project vol.1をやっと見つけたGALLERY wks.で楽しむ。中之島ロイヤルハイツの11階に上ると梅田がよく見える。マンションが綺麗な画廊になっていた。白くて住居の痕跡はまるでない空間である。

帰りがけに雲の形や排気管、隣のマンションの洗濯物が面白く感じたのも中西信洋のおかげ。彼の描く、もくもくとした煙が風ときっ抗しているような意思を秘めた気体状物体を眺めていたからだろう。

5)京都芸術センターでリナ・シェンフェルド(イスラエル)のワークショップを見る。
インターンシップの大久保さんがこちらにいるというので出かけたのだが、とても面白いダンスワークショップだった。彼女の言葉も深いし物を使うオブジェクティブなダンス(今日はビニール袋に空気を入れて飛ばすことと自分の踊りの関係づくりをしていた)ということでも色々考えさせられた。

また、何語でもない言葉で話すという部分やそのあとの顔の上半分だけの仮面で笑ったり泣いたりするところは演劇的でもあり、ピナ・バウシュと同期であるリナの真骨頂を見たように思う。金田典子さんとかも参加していてダンスワークショップがこんなに面白いとは!と感動していた。

6)アルティにて第2回シアターX世界舞台芸術祭のダンス公演を見る。19:06〜21:00。
協力に私の名前もあったのだが、なかなか学生などを動員できずに少し恥ずかしい。
でも、コンテンポラリーダンスの若手や中堅をいま関西では盛んになっていることもあって触れる機会はあるだろうが、ケイタケイさん(「根という名の鳥」)や佐々木満さん(「おしゃかだOh My God!」)、それに神澤和夫さんの振付(ラバンの庭「ever Forever」)を見るというのはなかなかに得られない機会だろうと思い残念である。実にダンスをちゃんと学ぶには大変勉強になる公演であった(明日もまた楽しみ)。

また、地歌舞の古澤侑峯さんの「葵上」での音楽(横澤和也)が石笛やホーミー風な声、指笛が使われていて、その単音の強烈さにどきっとした。ケイタケイさんのシンプルで静かさのなかの腕の揺れの凝縮、それに対して椅子で倒れ続ける佐々木満さんの、唄いしゃべる過剰でセンチメントな踊りの背後にまとわりつくドイツ語の日本事情が実に対照的。


KOGURE Diary/こぐれ日録》の扉へ戻る