こぐれ日録 KOGURE Diary 2002.10



185) 10/7〜10/10

10/7(月)

地域行政文化論の第3回。地方自治について前半話す。まだまだ分かりやすく話せるはずなのだが、うまくいかない。でも何とか文化政策の学生にはファミリアになって欲しいことなのだ。法律や条令を実現するということがそんなに遠い世界ではないということを。法律や条令がいくら立派でも実施する行政のやり方一つでとんでもないことが起こるということを。そして、その法律や条令がよくなかったら変えることもできるのだということを。

帰り、学生たちがいっぱい乗っているバスに自分も乗って動物園前(御堂筋線)へと急ぐ。NPO法人ダンスボックスの文さんがアートシアターdBの入り口から出てきて、今日、消防法がクリアした!という。今日のクルスタシアのワークインプログレスが初めての使用ということになるわけだ。

時間があったのでデジカメで付近を写していく。あっけんからんと廃墟に近くなった都心型遊園地は不気味だけれど爽快な気分にもなる。フィルムコミッションはここを売り込んだらいい(ダンスなどをしているときにドンパチされると困るけれど)。

通天閣のある商店街に出た。ビリケンが串カツ屋にもあった。日本一安い服屋や飲み屋が並ぶ。うちの組合の福利厚生事業として、キッチュなスパワールドに入ってから(オプション)、アートシアターdBでダンスキャバレーを見てずぼら屋などで宴会するというのはどうだろう。大谷燠さんは貸し切りでどうぞと言っているから、ここで食事までも出来るかも。

CRUSTACEA Dance Performance『RASSEL』はいままで計10回に渡って公演されている(パリ、バンクーバー、京都、大阪)が、まだまだ発展途上であり、今日のワークインプログレス(公開試演会)によってまた形がリファインされることもあるのだろう。

いままでのクルスタシアを知っている人から見ると、とても思い切った切り落としのなかでダンス自体を濱谷さんが追求しているんだなと今日の話し合いがあってより強く思った(他の人のアドバイスや感想もとても参考になる)。説明とともに話し合いのやりとりから浮かび上がってくることも多い。椙本さんの率直な踊り手としての感想がこの作品の作り方をよく現している。二人のコミュニケーション模様(交通と不通)をどう表現するのかが一つのテーマのようにも思う(「折り畳んでいく」と濱谷さんは言う)。

この作品は、6つに分かれていて、今日はその第1だけが公演されていたが、この部分は14分ほどあって、濱谷さんが英語の文法になぞらえて「現在形」と考えている第1部が一番長い構成になっているようだ。第2は過去形、第3はif(仮定法)、第4は未来形、第5は過去完了形(過去進行形)、第6が現在進行形という構成だという。

音楽の主題と変奏という形式や、ロンド形式(大3部形式)をすぐに類推した。西洋古典のシンメトリカルなかっちりとした構成のことだ。
コスプレもありコケティッシュもあり観客との接触や実際の情景もありの、いままでの穏やかなパンク具体表現主義的な有り様は、シリアスなアニメキャラ的動きに微かにうかがえるぐらいで、あとはダンスの構成そのものを見せようとする新境地の模索がいま最終段階に来ているのだという意思がきけてよかったと思う。10月の終わりの本公演が楽しみだ。

10/8(火)

コンテストの提言部門の予備審査。去年と同じぐらいの人数を選出する。今年は本審査に詩業家の上田假奈代さんも入ってもらったので、どんな感想を言ってもらえるか、今から楽しみ。

日本アートマネジメント学会の全国大会が仙台であってそのパネラーとして出ることになっていて(11/16)、そのための事前のブリーフの依頼が来たので早速作って送っておく(以下、その原稿)。
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【NPO法人による芸術施設マネジメント】
1.アーツマネジメントの三類型
 アーツマネジメントは組織からみて分類すると(A)芸術集団のマネジメント、(B)芸術施設のマネジメント、最近やっと実現してきた(C)アーツサービス機関のマネジメントに分けられる。

2.三類型がそれぞれまた3つに分かれる
 この3つの類型ごとに (p)民間営利部門、(g)政府部門、(n)民間非営利という経営方式の違いによる分類が可能になる。したがって、(A-p)である芸術集団(たとえば商業ミュージカル劇団)のマネジメントもあれば、(A-g)の兵庫県立ピッコロ劇団の運営も考察の対象となる。
 また、9つすべての欄が平等に事例が埋まるかというとそうではなくて、最近になって認知が可能になったサービスオーガニゼーションという組織形態はもともとアメリカなどのアーツNPO法人をモデルにしているので、(C-n)が圧倒的に多い。ただ、(C-p)として吉本興業などのプロダクションを考えてみることはできる。

3.そこで、芸術施設の運営方式はどうか
 これが本題になるわけだが、(B)の芸術施設のマネジメントにも企業による施設(B-p)がもちろんある。よく学生に例に出すのは画廊や映画館、演芸場やライブハウスである。カフェもギャラリーが併設できるしライブもできるので、アーツカフェ研究をする学生も多い。
 他方、(B-n)=NPOの芸術組織というのはNPO法人自体が最近のことなので、独立系の財団法人が作った美術館や劇場、映画館(大阪のシネヌーボー初め市民映画館は重要ではある)ということになるが、例は少ない。企業メセナ的なホールはこれに近いが、最近の関西に見られるように、やっぱり企業がしんどいと閉鎖されることになるから、(B-p)なんだなあと痛感したりする(扇町ミュージアムスクエア、近鉄劇場/近鉄小劇場)。

4.芸術施設のこれから〜公立民営の可能性
 芸術施設といえば大都市以外は特に公共施設である(B-g)ことが多い。いつもそこでの様々な問題点が指摘されつつ、何ら抜本的な解決もなくじわじわと予算が減ってきて、アウトリーチ的なワークショップなどもしつつ、暗くなってしまうことの多い課題でもある。
 そこで、NPO法人もできたことでもあるし、そういう自治法の体系(公の施設の委託)もあることなので、そろそろ公共ホールや自治体美術館を民間に任せようではないかという動きが出て来つつある。その中でも大阪市がはじめた新世界アーツパーク事業というのは、ユニークな実験研究材料になると期待しているので、以下に少し詳しく説明する。

5.大阪市のアーツアポリア
 大阪市は大阪府とともに、文化行政の指標ではだいたいに最下位を彷徨う。その分民間がしっかりやってきた。お上に文化を振りかざされるのが嫌いなところでもある。それでも最近は、大阪市として少ない予算の中で、民間ではできない芸術環境づくりは必要ではないかと考え始めている。そして民間劇場がなくなるのは、市民の芸術への投資という発想がまるで身に付いていないことの表れだから、市民へのアーツアクセスを本気で行わないと、やばいとも考え出した。
 それが、精華小劇場コトハジメ事業、大阪野外演劇フェスティバル、築港赤レンガ倉庫活用事業→アーツアポリア事業、サウンドアート事業などへと結実していく。さらに、今度新世界アーツパーク事業が始まる。この廃墟化したフェスティバルゲートの空き店舗に、コンテンポラリーダンスのNPO法人の運営によって劇場が作られ、新しい音楽バーが同じくNPO法人により誕生し、そして映像の研究上映施設もできたのだ(これも映像NPO法人の運営)。
 いま大阪市のディープなみなみに起きた新しい動きをぜひ体感しに視察されることをお勧めしたい。
(内容はホームページ↓を参照のこと)
http://www.festivalgate.co.jp/artspark/frame_SAPB.html

午後はキャンパスプラザ京都での地域文化行政論の第2回目。8名。何名になってもちゃんとやろうと思うが、大きい教室で少ない人数は聞く方としてもちょっと寂しいだろうと思ったりする。今日はマイクがなかったり色々トラブル。

曾根崎のジンジャーマンカフェ。今月15日でここでのライブはお終いになってしまう。岸田さんに、はなのうたを久しぶりに聞いてもらって、貴重なアドバイスを終わってからはなはしてもらっていた。感謝である。オレペコ企画はまたフリーとなりトリイホールで月2回のライブを続けるそうだ。シングルスももちろん。

はなのタイバンはLeoさん(ギターの弦が切れてピアノの弾き語りを先にしていた。「お留守番」がよかった。)

はなは、10曲歌ったが40分にもならず、アンケートにもあったように間とかMCに課題を残す。新曲ですと言って歌った「金木犀」が意外と評判よくて彼女はほっとしている。さきにメジャーぽいと言われたこともあり、自信がなかったみたい。短い曲であることには変わりがないが。

これも新曲に近い「月の向こう側で」(作詞は小暮さき)をラストにしていた。これはオールドソング愛好家にきっと受けるメロディーと思う(ぼくはドイツの賛美歌「樅の木」をすぐに連想した、全然違うけれど)。

10/9(水)

アーツリボンゼミに清水さんが参加してくれた。100%ORANGEトークショーの準備など、後期の実践的活動の準備がゼミの内容。コンテストの参加賞が何がいいかを尋ねると、大きなステッカーと缶バッチが同数で人気があり、あとはハンドタオルや携帯電話のストラップ、去年と同じシールなどだった。

午後から丸井さんによるニューズレターのプレゼンテーション。京都橘女子大学文化政策研究センター運営委員会メンバーに加えて広報課や学術振興課のみなさんも参加。タイポグラフィーを大切にする丸井さんならではのデザインで3つの案のどれになっても、いままでとはイメージを一新することは確実。

ピッコロシアター、兵庫県立ピッコロ劇団第17回公演『樅の木に短冊』。土田英生の作/演出。19:07〜20:38。女子高校生の集団がいつものように来ている。この前は養護学校の人たちもいたし、こういうお客さんの特質が県立劇団の特色。老若男女の笑い声がいっぱいで、いい雰囲気の観劇だった。姉と妹のパタンは割と類型的で、うちのはなとさきはかなり特殊な関係だと思ったりする。

1995年の作品(「Holy Night」)を改訂したものだが、クリスマスイブをペンションでアベックでという風習(この作品はそれに反対する人たちの集まるペンションでの話)が今は少し懐かしく感じられるかも知れない。それは電話を携帯でしないところにも表れて、その方が無理がない。近過去を描くことで少し同時代批評性よりも懐かしさのなかでの「気づき」へと変化している。

10/10(木)

気持ちのいい秋晴れの日。昔は体育の日だった。この頃に東京オリンピックが開催されたが、それは秋の中で比較的天気が安定しているという統計上の理由だったことを思い出す。その頃はデフレという言葉は経済理論上だけの言葉だけだったはずだ。誰も経験していないぐらいに久しぶりの金融パニックの恐れ。経済史の先生たちの出番のはずだが。

ぼくはどうしようもないから、午前中レジュメを作って(以下のもの)TAM研のメンバーを待っている。

【チラシから のぞく アーツマネジメント】
奈良県立西の京高等学校模擬授業(2002.10.30)
第1部 お勉強
“チラシは空を飛ぶ”
flier フライヤー
引札 ひきふだ
伝えたい気持ち
“芸術からアーツへ”
めだまのアーツ
じかんのアーツ
ことばのアーツ
“アーツのいれもの”
静寂  しじま
暗闇 くらがり
空隙 からっぽ
第2部 ワークショップ
“アーツのチラシを楽しもう”
2種類のチラシを見つける
心惹かれるチラシを選ぼう
“チラシをめぐるおしゃべり”
自由に楽しく そして聴き手に伝わるように

19時からは、大阪市中央青年センターでアートマネジメント体験セミナー。松本茂章さんの「アーツはニュース」。彼によるいつもの通りの熱い口調の2時間。でも、この体験セミナーを新聞記事(告知文)にするというワークショップも入れてくれて、(体験という割にはまだ話を受け身で聞くことが多いといっていた)受講者も満足してもらったと思う(もっと書きたかったという人もいたが)。

前の松本さんよりも新聞記者の特性を客観的に見ることができるようになった分、アーツマネージャーとしての自分と新聞記者としてのかつての自分の立場がときおりミックスするときがあるから、その二つの役割をクリアにして説明しつつ、いまからは新聞記者としてチェックしますという感じで臨むともっと分かりやすい授業になると思う(楽しみだ)。

でも、いらちで一言で言えばと聞きたがる社会部の記者(彼のようなタイプ以外ももちろんいるだろうが)の性格が伺うことが出来てみんな新鮮だったのだろうと思う。事件、ピンチ、初めて、いまどきの社会問題、世間の評判が好きなのだ。もちろん有名人は好きだろうしね。でも最近は松本さんは大分変わってきた。

昔、彼は、うちのさきが立命館宇治を受験するときだったか、クラキマイとかいう歌手をぼくが知らなかったから、とっても丁寧に説明してくれてそれでぼくはその歌手の曲を聴くのだが、何にも記憶にのこらずすぐその歌手の名前すら忘れてしまうというようなことがよくあった。だからこういう歌はマスコミというもので何度でも取り上げなくてはいけないのかも知れない。本当にいいものだったら、小声でも一度聴けば忘れないで残っていくからね。

はながニットキャップシアターの稽古に行って遅く帰ってきた。次の「おっぱいブルース」には、ごまのはえさんが「蚊」も入れようと言っていたようだ。さてどうなるか。アトリエ劇研12/6〜12/10。「スロウライフとことこ〜散歩と季節と明日のことと」というシリーズの始まり。チラシが独特(大庭佑子、坂田朋美)。「父と娘を中心に様々な人物が絡み・・」うーん。設定されている場所も実は八幡の辺りらしい。


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