こぐれ日録 KOGURE Diary 2002.11



199) 11/25〜11/28

11/25(月)

京都橘女子大学での地域行政文化論。乾正一さんゲストスピーカー。先週よりも話題を絞ってもらったからもあるが、学生が意外と理解していたのが嬉しかった。アーツの質と経済(集客)のグラフが特に。いま必要なのは事務と経理の能力という話にも驚きの声。

中間レポートは11名が未提出。それでもなんとかよく書いてきたなあという文章が多くて、特に1回生の時にずっと白紙のノートを前に何も書けませんと言っていた学生だって1枚ちゃんと書くのだからこれはまあ進歩の比率は大きいと思っている。文章のリズムをちゃんと持っている学生もいてもっと積極的になればライターになれるかも知れないのだが・・。リポートとして分かりやすく書いている学生や思いっきり分量使っている学生など読んでいるとなかなかに面白い。

アーツマネジメントについて編著で本を出さないかという嬉しい話が手紙で来ていたので電話する。先週にある出版社が来てぼくの書いた文章をごっそり持っていったというと、手紙を書いた女性は残念がっていたが、それもうまく行くかどうか分からないし、こっちの話はJAM Westの人たちとかで、自習したりするのに最適なスタイルを考えることが出来る。

以前松本さんが本を書きましょうと言っていたから(その時はぼくは自分の単著をまず出したいとつれなく言ったっけ)きっと喜んでのるだろうと思うので、12/3の午前中にその京都にある出版社の人に会うことにする。それに関経連の報告書をメインとした本を作ることも可能かも。これは仲川さんや佐藤さんに話してみる価値があるかも知れない(その本を関経連がらみで買ってもらって劇場文化の問題を共有することも出来るわけだし)。

フェスティバルゲート3階Art Theater dBでは初めてのダンスサーカスを楽しむ(20回目で今日が初日。明日、明後日と同じように5組12分ずつが行われる)。18時の回が終わった後でフェスゲーの通路が若い人で賑わっている。ちょっと嬉しい風景だ。少し同窓会ぽい感じもするが。
以下、600字余りで、ダンスボックス通信の原稿的に記してみる。

【ソロ二つ、グループ三つ】
ポポル・ヴフの「まどろみ喫茶店」は確かマジックランプのアーツコンペで見たが、今日のヴァージョンは言葉が凝縮していて、その分ラストに向かって強くなる踊りが溶暗したあともその余韻は実にさわやかに響き続いていた。ギターのチューニングみたいな始まりの生音も入っての12分、グループによるダンスは拡散することが多いがこれはよく考えて作られている。

きたまりのソロ「雛罌粟の家」。彼女は実に小さいからだなのだけれど、そして前説をしたりすると大丈夫かしらと思うのだけれど、踊る躰はまるで別である。ほんとに今日のステージはとても大きくそこにいた。引きつる笑い顔からの連想でもあるが、「夢食い小人」という絵本の主人公がここに抜け出したかと錯覚した。

姜明珍「触感」とAsh and dd.punch「Dive-ダイブ-」はどちらもグループワークによるダンスステージで、いろんなことをしたいという演出の思惑はよく分かる。ただ、それがどこか未消化で唐突な感じがぬぐえないのは12分という制限もあるし、劇的な(あるいは具体的な火や水が登場する)行為がダンスとつながるための発酵時間が足りないせいだろうと思った。

そういう面ではソロは強い。でもやっぱり一人では寂しいので映像と一緒に踊りたい。あるいは音楽に寄り添いたい、照明で面白くしたい、そういう気持ちはよく分かる。ラストに登場し床に映像を映すために白い布を敷いてから登場した石田陽介の「通天閣」は、映像と通天閣のミニチュアおみやげがその躰一つから伸びた補助線だった。でも比較的それらが彼の素の躰の潔さを邪魔しないでシンプルに使われていたからか、気持ちよい「シンプルマインドダンス」(変な造語だけど)になっていたと思う。

11/26(火)

早く行って研究室で昨夜のダンスサーカスレビューを書こう(また高松さんから依頼があるかも知れないので700字弱程度にしておいて)と思っていたら、すでに研究室の前に専門ゼミに入りたいというあまり知らない学生が立っていた。それから大学を出るまで、ずっと面接に追われていて(ほとんど名前を知らない学生たち)、山科駅に着いたときふと空腹を覚えて昼食をまだしていなかったことに気付いた。

カフェ好きなので何とか、結婚コーディネータになりたい。あるいは建築よりもインテリアをしたい。企画することで卒業できるのはここしかない・・・いろいろにみんな真剣で、向き合えば向き合うほど彼女たちと一緒にやっていきたいと思う。のだが、どうしても定員があるから、そのなかから選ぶという苦しい作業が待っている。他に道がありそうな人は、そちらに行ってもらうようにいったり結構大変。

それにしても演劇しか興味がないからうちしかダメだろうと思われる学生が来なかったり、こういう場合どうしたらいいのだろう。積極性で選ぶべき?メジャーな音楽好きの学生にもっとオリジナルなことを考えなくちゃ、というとオリジナル楽器づくりとかいろいろなアイディアを考えてくる。なんだかもうここにゼミが発生しているのかも知れない。うちの大学では飽きたらず京都市芸にも出かけたりしているという学生もいて、ぼくの知らないところに実はアーツに関わりたい多くの学生がいたんだと、つくづく思う。

中西美穂さんのコンソーシアム京都での地域文化行政論は、受講者自身に消防署へ届ける用紙を実際に書いてもらう作業つきで、なかなかに面白くうまい授業をしてもらった。来週の京都橘女子大学でのレクチャーは、学生たちが彼女自身にインタビューするという企画らしくて、また楽しみである。

第20回のダンスサーカスの2日目。今日も満員だ。
実に面白くて、でも正直、異様だなあとも実際は思ったおじさんがいて、今日はその人の話がしたいのだが、そのおじさんはまず入ったとたん、なんて小さな小屋やと吠えた。そしてやる者がかわいそうだと言う。

そうこうするうちにダンスが始まった。まず峠佑樹「sights」。めがねを取ってひげを生やしたどこかうらぶれた男が踊り出す。流れがある。そして特にバネのある腰が特徴。ただ音楽がずっと同じなのが惜しいなと思う。

次に市川まや「hot milk」。まだ19歳でバレエから少し自分の表現というものに目覚めた感じで、これからどうなるのかと将来のことを思わせるもの。曲にのって楽しく踊るという段階だけれど。

そしてそのおじさんがハッスルしたD・I・C・I・W。市民参加型ミュージカルでよく見かける感じのダンス。ちょっとえっと思いつつ音楽がなあとか思いながら見終わる。すると「テルコ」とそのおじさんの声がかかる。大衆劇場とか演歌場とかに親しんでいる新世界回りの人かも知れない。そこがすごいなあと思った。

そのあとは、なみこという人がマリンバ生演奏で「癒し系」の踊りをして(障碍者の人へも手をかざしていた)、最後に秋山雅近+古田敦子「拝啓くろやぎさん」がデュオであった。もちろん濃淡があるし違いはあるんだけれど、全体的に音楽に合わせそれにのってしまうダンスという時点で、身体のたたずまいが表面的な振りになってしまいがちな感じがした。ユニークさをもっと見たい気がする。

11/27(水)

今日もダンスサーカスに行きたかったけれど、色々教授会などが忙しくて行けなかった。専門演習について面談したい学生もあったようだが、教務委員会にピンチヒッターで出たりして思うように聴けなかった。

また演劇を中心に実績は申し分のない学生でかつうちに来たいと言っていたのに来ない学生についてずっと心配なので彼女の友人にメールを打ったりする(そのおかげで28日には来て、1週間病気だったらしくようやく彼女も無事アンケートを提出した)。

基礎演習は2名の欠席でかつ、出席の2名も病気。気をつけなくては。このゼミでは、12/9の山科芸能文化祭(今年は展示部門がないけれど、その替わり飾り付けをすることになりそう)の準備や司会/山科音頭などの練習をやってもらえば、あとはダンスのワークショップを少し経験する(12/18)のみだ。

11/28(木)

今日の午後から専門演習の希望投票があるからきっと午前中に来るかと思ったら誰も来ない。来年度のシラバスを6つ入力。あと6つ(これらはまるできまっていないものだから大変なのだが)だ。公費助成委員会に昼休み出かけた留守に3通も専門演習にかかわる事前アンケートが届く。

これで22通目だ。ここまではとりあえず受け付けたこと(=学生が第1希望にしてきたら選択対象)にしよう。あとは青木先生らと相談して決めるしかない。ぼくはどうしても性善説だから何とかしたいと思ってしまうが(出席率のかなり悪い学生たちもいる)、実際のところアーツマネジメントの実践研究できちんと卒業制作までこぎ着けるのかどうか、馴染みのなくアーツやアーツマネジメントに関わる経験がない学生たちについては実際の所まったく見えてこない。

TAM研はアクティブメンバーの確定を12/6にすることを決めていた。来週には予算が下りるのでデジカメも買えそう。授業があって忙しく今日も行けない上田さんらに羨ましがられながら、ぼくは26日から始まった待望の展覧会へと向かう。

恵文社一乗寺店の奥にあるギャラリーアンフェール。100%ORANGE個展『曲線のところがむずかしいんだ』。この展覧会名は、てっきり、イラストレーションとして曲線を描くって直線よりもむずかしいということからとったもの(そのニュアンスはもっと暗喩的に広がるとしても)だと思っていたが、実は違っていた。

だいたいに100%ORANGE(及川賢治と竹内繭子の二人組)の作品に接すると、こういう、やられた、憎いという気持ちが生まれることが多い。つまり微笑ましくも負けてしまうウィットに富んだ言葉遣いがあって、それは言葉だけではなく、スケッチする瞬間力の確かさとそのテーマの選び方の鋭さということでもある。

今回もそういう部分を楽しみたくて、まず絵だけを見て、自分でタイトルを考えてから実際のタイトルを読み自分の予想とのギャップを楽しんだ。負けたと言ってもアバンギャルドな圧倒のされ方ではなく、ふふっと唇が半開きになるささやかなおどろきなのだけれど。

恵文社一乗寺店にいったん来ると手ぶらでは帰れない。入り口には昔懐かしい喫茶店本はあるし、フランスの修道士さんのレシピ本、それにアンティーク着物の雑誌が創刊号、2号とあって、それらは専門演習のこともあって買わないわけにはいかない。

もちろん奥のアンフェールへいけば100%ORANGEグッズがぼくを呼ぶ。ポスター(大きい方はいたいたものと同じだったので、小さい方のものを買う。でも「偶数」をテーマにするなんてやっぱり並じゃないなあ)や雑誌類、小物たち。全てではないがめぼしいものは買ってしまう。

もちろんタイトルが英語になっている小冊子『The curving point makes me in trouble』は3冊ゲット。これを読むと展覧会のタイトルの意味が分かるんだけれど、実にシュールで可愛い絵物語。裏表紙の裏に「けいぶんしゃ」のハンコが押してある袋があって、帰ってそれをさきが見つけて、「これ恵文社から借りてきたの?」と間違う。図書館の貸し出しカードを入れる袋を使うってやっぱり可笑しすぎ。

(詳細はアーツ・カレンダー「こぐれ日記402」をみてね)

アトリエ劇研では、さらんプロデュースvol.3『うたをうたっている』があった。19:05〜20:21。客席と舞台の使い方がいつもと違ってとても新鮮(舞台美術:宮永甲太郎)。ウィングフィールドでもたまにこういうように長方形をより細長く切断する舞台づくりを深津篤史あたりがするけれど、音響照明卓を動かしたりしなくちゃでめんどうな作り方だろうと思ったり、壁はやっぱり黒いなあと見たりしている。

当日パンフを見ていないで、帰って構成+演出の杉山準が書いている文章を見てはじめて、これが「門」(別役実、1966)と「虎」(マレー・シスガル、1960)を短冊状に演じ分け、微妙に関連づけた「現代劇」だということが分かる。だからあえて客席から二つの演じる場所を同時に見えないように長くしていたのかも知れない。

「門」の方は欠勤している公務員(宇田亮太)と通っちゃいけないと首を絞めてしまった靴ミガキ(二口大学)のやりとりで、男同士の切ない心の交換。「虎」の方は大学教員になりたくてもフランス語ができない危ない独り身40歳男(杉山準)と、その男に捕まって拉致されたが逆に男にフランス語を教えるしっかりとした女(豊島由香)のちょっと心温まる物語。

ただこの二つの物語が交差することでまた別の物語がどんどん生まれる予感がする。
どちらもラストは歌をうたうが、舞台で歌を歌うのはライブとはぜんぜん違うことで、親バカに、はなは大丈夫かしらと自分の娘のことを思ったりもした。


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